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第2回「ミニシアターがいま伝えたいこと」


下高井戸シネマ・木下陽香さんに劇場の現状をききました。

緊急事態宣言の延長、東京都では映画館の休業要請が緩和されませんでした。
その中で営業を続ける映画館の声を聞いてきました。
(取材日 2021/5/9)

緊急事態宣言が延長されましたね。今の心境をお聞かせいただけますか?

まず、なかなか「来てください」とは言い難いんです。
開けているとは言え、感染リスクはもちろん、正直世間からの批判も怖いですし、どうしたらいいんだろう…という気持ちです。状況によっては、営業を続けること自体がいつ批判に転ぶかがわからないので…。その選択が苦しいです。
かと言って閉めるだけの体力もないので、やるしかない。というところなんですが…。

本当に国は守ってくれないんだなって思いました。自分の身は自分で守るしかないんだなって…。

もちろん国が決めたことに従うのがベストだとは思うんです。でも、今の国には頼れないですね…。それで潰れてしまったら元も子もないので。

一回目の緊急事態の時に、お客様からいただいたメッセージや寄付も裏切りたくない。という気持ちも強いです。
この状況の中での営業だとしても、なんとか体力をつけていかないといけないと思っています。ミニシアターエイド基金・SAVE the CINEMAの動きも大変嬉しかったですが、当館でドキュメンタリー映画の上映会をされている飯田光代さんが、独自で集めて下さった寄付や、当館独自のクラウドファンディングで直接支援をいただいたりもしたので…。もう一度頼るわけにはいかない、という気持ちもあります。

ただ、すごく恐れているのがこれで感染者が出てしまった場合ですね…。
「やっぱり映画館で感染するんじゃないか」と言われたらと思うとゾッとします。かと言って閉めるという選択肢は取れないんです。毎日、どうしたらいいんだろうというせめぎ合いの中、粛々と続けています。

でも、そんな中「開けててくれてありがとう」「映画が見れなかったから、やっててよかった」と、来てくれるお客さんもいるんです。
こういう事態になって、余計映画館って必要だなって思いました。

仕事して食べて寝るだけじゃ生きていけませんよね。
そんなお客さんの駆け込み寺みたいな存在であり続けたいとも思うんです。

ラインナップはどのように決めてるんですか?

最近はGWということもあって広く映画好きの方向けにプログラムを組みました。
ただ、コロナ禍における通常のプログラムの方向としては、「この状況においても映画館に映画を観に行きたいと思う人に向けたプログラム」を組めたらな…とも思っています。かと言ってあまり偏らないように。
特集でテーマを決めて…とかも前々からやってきていることですね。

あと、小・中学生にもきてもらいたくて…。アート系のミニシアターを目指しているわけではないので、地域の人に楽しんでもらえるよう場所になったらいいなと思っています。
ここで映画を好きになって、未来の映画人が育てられたら嬉しいですね。

コロナ禍のさまざまな動きの中で若い方々への認知が高まったのはよかったな、と思います。会員も、若い方が一気に増えたりして…。
でも、まだまだ一般の方には知られていなくて…。敷居が高い場所じゃないよ、というのを知ってほしいですね。

木下さんが下高井戸シネマを引き継いだのは2019年ということですが…。

はい。元々は父が経営していたんです。2019年に亡くなって、それから私が引き継ぎました。もちろん人生ではじめて訪れた映画館も下高井戸シネマです。

でも、「父の仕事場に行く」みたいなのが恥ずかしくて、思春期に差し掛かってからはいかなくなってしまって…。今となっては勿体無いことをしたようにも思います。

ただ、父が映画好きだったので子どもの頃から映画を見ることは多くて…。わたしはチャップリンやキューブリックの作品やゴットファーザーなんかが「誰もが知っている有名な作品」だと思ってたんですが、クラスの友だちにそれを話すとちょっとズレていることに気がつきましたね(笑)

平成26年から亡くなるまでは父がずっと番組編成をしてきたんですが、今はその頃から二十年以上にわたってうちに勤めている(当時はアルバイトとして)スタッフが編成をしてくれています。偏らないようにバランスをみてプログラムを考えていますね。

そんな経緯で、わたしは入ってからこの劇場のいろいろなことを知ることになるんですけど、愛されてるんだなぁということをまず知りました。お客さんに、本当に。

これはコロナ禍でも感じましたが、自分の人生と照らし合わせた時に「このお店存続してほしいな」って思うことってそんなにないと思うんです。
でも、いろんな方からの支援やメッセージを受けて、「ああ、ミニシアターてこういうところなんだ」ということを教えてもらいました。だからこそ乗り越えないとですね…。

ファンも多く、地域に根ざしているミニシアターですよね。

はい。お客さんが来た時に、「いらっしゃいませ」というより「こんにちは」というイメージなんです。

敷居が全く高くない場所として存在したらいいなと思います。子どもからおじいさん、おばあさんまでいる感じ。だって、世の中って子どもからおじいさん、おばあさんまで一緒にいるというのが自然だと思うんです。同じ世代だけがいる空間というのはいびつな気がする。
それなのに、いろんな世代が混じっている場所って、意外にあるようでなくて…。でも、ミニシアターはいろんな世代の人が自然と一緒にいられ場所な気がします。

今後の展望もお聞かせいただけますか。

5月末からはオリジナルグッズの第二弾がはじまります。

国の対応を見るに、本心ではどうでもいいんだと思います。だから正直気持ちが折れそうになることもありました。今もあります。

でも、助けたいと思ってくれている人がいると思うと、怖くても前に進めました。一回目の緊急事態宣言が出た時に、支援や応援の声があったから閉めずに入られたように思います。
これだけの方から「なくらないで」と言ってもらえているなら頑張ってみよう。なにがなんでも続けていかないとなって…。

お客さんに、支えていただいて本当にありがとうございます。ということ、それがまず、一番にあります。
リスクがあるから大きな声で「来てください」とは言えませんが、こんな時だからこそ映画館でリフレッシュしていただければと思うので、お待ちしています。がんばりますね。

第二回「ミニシアターが今伝えたいこと」は、下高井戸シネマ支配人の木下陽香さんにお話を伺いました。

必要不可欠なこの場所について、これからもいろいろな劇場さまの声を届けていければと思います。よろしくお願いします。